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空と石の塔

石を積み上げれば空に手は届くだろうか。

きっと届く。

だから今日も、私は石を積み上げる。

海岸沿いで拾った、少し湿った石。

手のひらサイズで、丸くて、すべすべした石。

今日も一つ、重ねていく。

ことん

重ねられた石は少しだけ首を傾け、自分の寝床を見つけて静かになる。

空に手を伸ばすが、指先を風が駆け抜けていくだけ。

さらさらとしていて、もう少し伸ばせば今にも手が届きそうで。

青くて、深くて、すぐそこにあるのに。まだ遠い。

石は硬くてつるつるだけど、空はどんな触り心地なんだろう。

明日もまた、私は石を積む。

やがて季節が巡り、遠くの海に島ができては、消えていく。

そんな毎日。

やがて、石の塔は私が一日かけてのぼっても、てっぺんに辿り着かないほど大きくなった。

私が塔の頂上にたどり着く頃には、水平線はやや丸みを帯びていて、太陽の光を受けて淡く輝いていた。

ことん

今日も一つ、重ねていく。

もう、空を触れるだろうか。

私は指先を伸ばす。

風はもう感じない。少しだけひんやりしていて、ちょっぴりふわっとしている。

空はすぐそこにあるのに、まだ届かない。

私の眼の前には、まだ深い青が広がっている。

ことん

ことん

何度も何度も、重ねていく。

やがて私がもともと住んでいた島は海に沈み、石の塔だけが浮かぶようになった。

そして今、最後の石を、

ことん。

もう、空に手は届くかな。

水平線は遥か彼方に。空は今までで一番深い青。

ここでなら、届くかもしれない。

指先が震えている。

私は、もう片方の手を添えて、力いっぱい腕を伸ばした。

何も、感じることができなかった。

空って、もっと暖かくて、きれいで。ふわふわで。

その場に腰を落とす。

空を触ることができなかった。

こんなに、こんなに頑張ったのに。

私の手は土で汚れている。

そういえば、最後に石のつるつるを感じたのはいつだっけ。

私は最後に積んだ石をもう一度手に取る。

やっぱり、何も感じない。

もしかして......。私は、両手を服の布にこすりつける。何度も、何度も。

指の先だけ、石に触れてみる。

ちょん。

硬い。

私は指を少し撫でるように動かした。

つるつるだ。

私は両手で抱え込むように石を手のひらいっぱいに持ってみる。

やっぱり、つるつるだ。

私はもう一度、空に向かって手を伸ばす。

指先は震えていない。

めいっぱい指を伸ばす。

......明日からはもう、石を運ばなくてよさそうだった。